気が付けば、狭い庭が草だらけである。雨を得て伸び放題。たくましいやつらだ、と苦々しく思っていたら、そうでもないらしい。たくましいには違いないが、むしろ、したたかと言った方がいい

 稲垣栄洋(ひでひろ)静岡大教授の「植物はなぜ動かないのか」(筑摩書房)によると、雑草は、学問的には弱い植物とされている。同じ土俵では競争に勝てない。なので、強い植物が育たない場所に生える。道路ぶちや田畑で見かけるのは、こうしたわけだ

 自分を踏みつけた靴の底にくっつき、生息域を広げる。草取りも増殖開始の合図にすぎないらしい。繁茂した草が抜き払われて光が届けば、今が機会と土中の種子が目覚め、競って芽を出す。誠にやる気をそぐ事実である

 生命が誕生した38億年前、動物も植物もなかった。そこから延々と、命の糸は一度も切れずに続いている

 木から進化した雑草も、猿から進化した人間も、あなたも私も、さかのぼれば、ここに立っているだけの理由がある。弱ければ弱いなりに、逆境も味方にし、あらゆる生物はしたたかに生き抜いてきたのである

 <みんな、云(い)っとくがな、/生れるってな、つらいし/死ぬってな、みすぼらしいよ-/んだから、掴(つか)まえろよ/ちっとばかし 愛するってのを/その間にな。>(ラングストン・ヒューズ「助言」、木島始訳)。