「平和でなければ地場産業の振興もない。そういうことです」。毎年この時期、徳島市木工会館で徳島大空襲にまつわる企画展が開かれる。木工会館と空襲、何の関係が? その問いへの答えである

 館を運営する徳島市地場産業振興協会の上杉和夫理事長は終戦から1カ月、1945年9月の生まれ。戦争を知らない第一世代だ。前職の市役所職員になったのは68年。30代後半以上の先輩は全員、戦争体験者だった

 「絶対当たらないと分かってはいたが、とりあえず撃ったもんだ」。B29爆撃機を迎え撃つ高射砲要員を務めた先輩は、大砲の扱い方をよく解説していたという。空襲で逃げ惑った話、ひもじい思いをした話。戦争の記憶を語る人は職場にいくらでもいた

 初めて戦争展を企画した6年前、戦後65年、先輩を訪ねた。多くは亡くなっていた。当たり前のように聞けた話が、もう聞けなくなっていた。どんな歴史もいずれは風化してしまう。伝えることの大切さを痛感した

 71年前のきょう、炎が徳島市を覆った。死者約千人、負傷者は約2千人に上る。市内の作家に依頼して、その様子をタペストリーにし、今回の展示の柱にした

 昨年の戦後70年を区切りに閉じるつもりでいた企画展。会館を任されている間ぐらいは、と思い直した。「平和でなければ。そういうことです」。