初めて1票を投じる人へ、すぐ読める1冊を、と思案した。これなどどうだろうと思うのが「池上彰のあした選挙へ行くまえに」(河出書房新社)。著者は平明な語り口で人気のジャーナリスト。分かりやすいこと請け合いだ

 いきなり印象的な表現に出合う。「ブレット(銃弾)からバロット(投票)へ」。人はそれぞれ利害を抱えている。そこから起きるさまざまな争いを、昔は武力で解決した

 もう血を流さずに収めようじゃないか、と導入されたのが選挙である。たまった不満を解消する「選挙は社会の安全弁」と池上さんは言う。経済発展後も、中国で暴動が絶えないのは、代表を選ぶ自由な選挙がなく、市民の声が政治に届かないからだ

 対して日本。高齢者施設は次々建つのに、なぜ保育所は後回しになる。子育て世代には疑問もあるだろう。理由は単純。少子化で数が減った上、選挙の投票率は著しく低い。若者は票にならないのである

 デモばかりが声じゃない。票が稼げる高齢者の声を、政治家が聞きがちになる。「シルバー民主主義」と呼ぶ

 限られた予算の配分を決めるのは政治。偏りがあれば選挙でただす。この国のルールである。今回の参院選、結果次第で憲法改正も日程に上ってこよう。膨らむ国の借金、年金問題、原発再稼働。未来を選ぶのに、銃弾はいらない。