辛口の箴言(しんげん)で知られた17世紀フランスのモラリスト、ラ・ロシュフコーは記す

 過ちについて。<人間は案外よく自分の過ちを知っているものだ、ということがわかるのは、彼らが自分の行いについて話すのを聞いていると、彼ら自身は決して悪くないことになっているからである>(「箴言集」二宮フサ訳)

 イラク戦争への参戦は正しかったか。英政府が設置した委員会が、7年にわたる調査の末、最終報告書を発表した。結論に言う。時のブレア政権の判断は正当化できない。平和的な解決の努力が尽くされていない

 戦争の大義とされた大量破壊兵器は結局、見つからなかった。なぜ誤ったか、米英両国は検証を続けてきた。開戦を支持した日本は4年前、事実誤認はやむを得なかったとする報告書を外務省がまとめた程度。第三者による公的な調査や検証は行っていない

 失敗から教訓をくみとる。責任の所在を明らかにする。過ちを繰り返さないための常道である。戦争から10年以上たっても、こうした努力を忘れない英国。あくまで消極的な日本。国民の安全安心をつかさどる国として、どちらがあるべき態度か

 モラリストはさらに筆を走らせる。<彼らは悪いときめつけられそうなことはどんな小さなことでも、言わずにおくか、ごまかしておくのである>。誰とは言わない。