言葉に打たれるときがある。ありふれているようで、折に触れ思い出す、こんな一言である。<職業に貴賤はないと思うけど、生き方には貴賤がありますねェ>(「職人」岩波新書)

 ベストセラー「大往生」で知られる永六輔さんが採録した職人衆語録にあった。「生き方には貴賤がある」。何げない物言いだが、改めて口にすれば怖い。お前さんはどうなんだ、と問われている気がして

 亡くなった永さんもそんな言葉に、たじろぎ、迷いながら生きることがあったろうか。「遠くへ行きたい」「見上げてごらん夜の星を」。数々のヒット曲の作詞を手掛け、放送業界でも無二の語り口が人気だった

 「上を向いて歩こう」は、日米安全保障条約を巡る1960年の安保闘争で挫折した経験を歌ったものだそうだ。こぼれる涙を放ってはおけない優しさがにじみ出ていたからこそ、半世紀後の東日本大震災でも、被災者を励ましたのだろう

 一貫して反骨、反権力の人だった。昨今の世相に後ろ髪を引かれつつの道行きには違いない

 まっとうに生きなさい。雲の上から聞こえてくるようだ。<戦争がなくても、事故や病気がなくても、人間はいつか、死んでいく。そのときに、そこに幸せがあるか、生きていたことに感謝ができるか>(「上を向いて歩こう 年をとると面白い」さくら舎)。