天皇陛下が生前退位の意向を示されているという。お忙しい身、もしや、と心配したが、今すぐ退位しなければならない健康上の問題があるわけではないそうだ。ひと安心した

 よくよく考え抜かれてのことなのだろうと思う。宮内庁によると、外国の賓客や勲章受章者らと面会する公務は、昨年1年間で約270回に上った。もちろん、公務はそれだけにとどまらない

 阪神大震災や東日本大震災といった大規模災害時、その姿が被災地にある。誰もが知るところである。82歳になった今も、熊本地震で傷ついた人のもとへ皇后さまと共に駆け付け、励まし、勇気づけている

 「先の戦争を十分に知り、考えを深めていくことが日本の将来にとって極めて大切なこと」。平和への思いは格別だ。お言葉通り、太平洋戦争の激戦地に慰霊の旅を続ける。1月にはフィリピンを訪ね、戦没者を追悼した

 江戸時代の光格天皇以来、200年ぶりになるという生前退位を口にしたのも、国民統合の象徴として、一つ一つの公務を大切にされているからこその決断ではないか。意向を尊重するのなら、生前退位の定めのない皇室典範の改正が欠かせない

 平和と民主主義をうたう日本国憲法の下、陛下は象徴天皇の在り方を体現してきた。その地位の継承について国民的な議論が必要な時機といえそうだ。