中央省庁の地方移転を巡り、常々考えていたことと重なって、きのうの本紙朝刊に掲載されていた元総務相、片山善博慶応大教授のインタビューを興味深く読んだ

 一極集中の弊害は分かり過ぎた話。例えば、首都直下型地震で、東京が壊滅的な打撃を受ければどうなるか。首都機能の分散、省庁の地方移転は災害の多い日本の戦略的な課題である

 待機児童の解消や住環境の向上など、都知事選の候補者が語る首都の課題も、人口が分散すれば少なからず解決しよう。「本来なら、国が地方に頭を下げてお願いすべきだ。取るべき態度がまるっきり逆になっている」

 移転の課題を検証するため、消費者庁が徳島県庁で大規模な試験業務を行っている。納得がいかないのは、機密情報のやりとりが必要な業務を、原則として実施しないとしていることである。根幹となる業務の試験をやらず、どうして試験と呼べるのか

 移転するかどうかの結論は、来月末にも出る。試してもいない業務の難しさを理由に、移転できないとの結論を導くことがあってはならない。どこまで本気なのか、と担当記者は怒る

 消費者庁一つ動かせないというのなら、一極集中の是正などできるはずがない。難題が山積している。それは最初から分かっていたことだ。乗り越える知恵を絞り出すために、試験はある。