どれだけの悲しみを世界に振りまけば、テロは終わるのか。日本人7人の命を奪ったバングラデシュ・ダッカのテロ事件から、わずか2週間しかたっていないのに

 フランス南部のニースで、花火見物に集まった群衆にトラックが突入し、多数が死傷した。フランス革命記念日。自由、平等という民主主義の理念を象徴した日の凶行だった

 先祖の誰一人が欠けても存在し得なかった命を、なぜ襲撃犯に奪われなければならなかったのか。悲しみは尽きることがない

 ダッカのテロで亡くなった女性が自分の所属する大学院の修了生だったという上田紀行・東京工業大教授が、おとといの本紙朝刊でこう書いている。テロとは、グローバリズムの影響で共同体の絆が弱まり、脱宗教化する中で「個人がネットに吸引され洗脳されるという、極めて現代的な状況が生みだす暴力なのである」

 グローバル化にも、ネット社会にも、光があり影もある。その影が次第に大きくなり、過激派組織「イスラム国」(IS)が影響力を強めてはいまいか

 憎悪や報復は、悲しみを繰り返し生みだしていくばかりである。その悲しみを世界中の人たちが共有する、そんな連鎖は断たなければならない。テロに駆り立てられる若者たちに教えたい。命は全てつながっている。命のリレーを守る勇気を持って、と。