<奥や滝雲に涼しき谷の声>宝井其角。作者の前に広がっていたのは恐らく同じような光景だったのだろう。でも、少し趣が違って、こちらは涼感が染み渡るようだ。<荒瀧(たき)にしてかく静かなる山中>小島花枝
四国地方の梅雨が明けた。暑さの方は既に到着して久しいが、名実ともに本格的な夏の到来というわけである。「梅雨明け十日」という通り、気象台によると、向こう1週間は太平洋高気圧に覆われて晴れる日が多い見込みだそうだ
炎天、水恋しさに歳時記を繰った。岩の間から染みだした清水が、滴り集まって、流れをつくる。<渓川(たにがわ)の身を揺りて夏来るなり>飯田龍太。流れはその後-
<瀧の上に水現れて落ちにけり>後藤夜半。力強さでいえばこちらの句も相当だ。<大瀧を足ふみしめて仰ぎけり>鈴鹿野風呂。思い浮かぶのはいくつかの名瀑(めいばく)。そして流れは海へと向かう
本日、1面から社会面まで、県内の水辺の風景を紹介した。冒頭を飾るサーフィンの写真、カイフポイントは、深山の水滴が海部川を下り、太平洋と出合う場所。マリンブルーの海と混じり合って大波となる
並ぶ写真を眺めながら思う。水に恵まれた徳島である。青い山に分け入るのもよし、砂浜で炎熱に立ち向かうのもよし。川遊びも、もちろん。生命の躍動する夏。涼んでばかり、では惜しい。