先日訪ねた寺院の壁に、張り出してあった。墨痕鮮やかに「小供しかるな来た道だ 年寄り笑うな行く道だ」。遠くもない将来を思えば身につまされる。こんな数字を目にすればなおさら
博報堂生活総合研究所が10年ごとに実施している60~74歳を対象にした意識調査(複数回答)で、欲しいものは「お金」と回答した人は40・6%。「幸せ」の15・7%に大差を付けた
世知辛い世の中、先立つものは必要で、調査結果もこんなものか、と思うけれど、40%、お年寄りのため息が聞こえてきそうな数字である。調査を始めた1986年、「幸せ」は31%。28%の「お金」をわずかながらも上回っていた
96年に逆転した後、差は広がる一方だ。厚生労働省によると、生活保護を受ける高齢世帯は過去最多となり、今や受給世帯の半数を占める。「老後破産」「下流老人」といった言葉がはやるのも、むべなるかなである
いや待てよ、とも思う。回答者は退職金も年金も、しっかりもらえる「逃げ切り世代」だ。その世代でこうならば、つけを払わされる若者が調査の年齢になるころには、数字の差はもっと広がっている可能性がある
世代間格差が言われ、子どもの貧困も問題となっている。欲しいものは「お金」。高齢者ばかりではないだろう。世界3位の経済大国の、幸薄い社会である。
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