ソフトバンクグループが買収した英半導体開発大手アーム・ホールディングスは、工場を持っていないファブレス企業だ。半導体の設計はするが、製造、販売はしない
半導体メーカーからの技術使用料などが収益源である。スマートフォンやタブレットといったモバイル端末向けに強く、昨年12月期の売上高は約1350億円。知恵で稼いだ。3兆3千億円もの途方もない買収費は、この知恵の成長性にかけた、というわけだ
「非常に安く買えた」。グループの孫正義社長は記者会見で答えている。額面通り受け取っていいものか。どうも現実感がないのは、買収額の大きさばかりが理由ではない。今後の事業の柱に掲げる「モノのインターネット(IoT)」の姿がまだよく見えないからだ
英語の「インターネット・オブ・シングス」、家電や自動車といった身の回りにあるモノをネットにつなげ、情報をやりとりできるようにする技術である。スマホで家電を遠くから操作したり、得られる大量のデータを活用して新たなサービスを生み出したり。既に一部では始まっている
便利なようだが、例えば携帯電話は「ガラケー」に限るという人はどうなる、とも思う。が、情報過疎もまた商売の対象になるのだろう
暮らしの隅々にまで入り込むネット頼みの未来。少々息苦しくも感じる。