<語らひを重ねゆきつつ気がつきぬわれのこころに開きたる窓>。天皇陛下が皇后陛下美智子さまとの婚約内定後に詠まれた歌である

 「結婚によって開かれた窓から私は多くのものを吸収し、今日の自分を作っていったことを感じます」。結婚満50年の会見でのお言葉だ

 昭和天皇の崩御に伴い、即位して27年余り。陛下は美智子さまと二人三脚で象徴天皇としての公務を果たしてきた。皇室外交の場でも、太平洋戦争などの慰霊の旅でも、陛下に寄り添う美智子さまの姿がある。避難所で膝をついて励ます両陛下の姿が、どれだけ被災者を勇気づけたことだろうか

 天皇陛下も82歳。「お気持ち」の中で、体の衰えに言及し、「象徴の務め」を果たすのが難しくなることを案じた。端々に生前退位のご意向がにじんでいた

 奈良時代から江戸時代後半の光格天皇までは、譲位による皇位継承が一般的だった。現行の皇室典範に生前退位の規定がないのは、天皇の地位を安定させる意味があるようだ。今の時代に合わせて改正されてもいいはずだ。国民的論議を深めたい

 仮に、生前退位を選んだ陛下が美智子さまと共に過ごす穏やかな老後の日々に、思いをはせてみる。長い間、国民はお二人が開かれた窓から、いたわりや慈しみの気持ちに接してきた。退位しても、その窓は開かれていよう。