備えあれば憂いなし、という。憂いをなくすだけの備えがあるか。住民の不安は解消できたか。甚だ疑問の多い四国電力伊方原発3号機の再稼働である

 「考えられる最高の安全対策が施されている。福島と同じことが起こることはない」。再稼働に同意した中村時広愛媛県知事は記者会見で述べた。「考えられる」範囲内では、との限定付きである

 過去を振り返れば、事故や災害は「想定外」の繰り返しだった。つまり、考えられないことが発生する、それが過酷事故であり、災害なのである。震度7が2回続いた熊本地震を、誰が想定していただろう

 「考えられる」の中に、せめて熊本地震の経験は生かされているか。地震が起きれば、道路は寸断され、避難施設も被災する。自然災害と原発事故の複合災害を前提とすべきだが、そうはなっていない。避難計画は計画倒れに終わり、細長く延びた佐田岬半島の5千人が孤立する恐れがある

 原発が厄介なのは、何も起こらなくても課題が蓄積し続けることである。原発から出る核のごみ、高レベル放射性廃棄物の最終処分に、答えは出ていない

 政府は、処分場の「有望地」を今年中に示す方針だ。火山のない本県も含まれる可能性がある。議論は沸騰するに違いない。ごみ処理にけりをつけないで、ごみを増やす再稼働が許されるのか。