大麻の栽培が三木家の畑で始まった。播種式では三木家当主の三木信夫さんが大麻の種をまいた=美馬市木屋平貢

大麻の種まきの後、次代を担う木屋平小中学校の児童生徒が記念行事として獅子舞を披露した=美馬市木屋平貢の八幡神社

 麁服が供えられる大嘗祭に関しては「憲法にある政教分離の原則に反するのではないか」との指摘が付きまとってきた。

 大阪高裁は1995年3月、即位の礼と大嘗祭への国費の支出差し止めや違憲性の確認を求めた訴訟の控訴審判決で「大嘗祭が神道儀式の性格を有することは明白。政教分離規定に違反するのではないかとの疑義は一概に否定できない」としたが、いずれの請求も退けた。原告側は上告せず、判決は確定した。

 鹿児島、大分両県知事が大嘗祭や関連儀式に公費で参列したことが、政教分離に反するか否かが争われた裁判もある。

 最高裁は2002年7月、両県知事の訴訟について「参列は社会的儀礼に尽くすもの。宗教との関わり合いの程度は限度を超えるものとは認められない」として合憲と判断した。

 大嘗祭に向け、9日から大麻を栽培している美馬市木屋平の住民は、前回の平成の大嘗祭の時にも随分、政教分離を意識したという。今回も同じだ。

 木屋平の住民18人で作るNPO法人あらたえ理事長の西正二さん(76)=元木屋平村長=によると、畑への柵設置や監視カメラの整備、栽培技術の指導、警備業務、監視所の光熱費、麁服の輸送などに多額の経費が必要になる。大麻の栽培にかかる費用は全て地元負担で、自治体からの補助は一切ない。

 運営には原則的に寄付金を充て、各種団体や個人に協力を求めている。「県内外に住む旧木屋平村出身者や、麁服の伝統文化に関心のある企業経営者、歴史ファンにも積極的に呼び掛けている」

 ただ、心配は尽きない。会員18人の内訳は40代と50代各1人、60代5人、70代8人、80代が3人と高齢化が著しい。

 大麻の栽培だけでもかなりの重労働だ。さらに西さんを筆頭に18人が、24時間交代しながら約3カ月間にわたって、大麻の葉が畑の外に出ないように目を光らせることになる。

 「本来なら業務に見合う手当を出したいが、運営は厳しい。せめて食事代や交通費、作業用の道具代だけでも支払えれば。会員の健康を祈るばかり」と、西さんの思いは複雑だ。

 そして「この地域だけで麁服作りを担うことができるのだろうか」と将来にも思いを巡らせる。大麻の栽培に従事したり、経費を負担したりする人口は限られている。そもそも地域に人がいなくなっている中、経費が安定的に確保できるという保障はない。

 麁服の調進は有形、無形の文化財的な要素を含む。地域が誇る伝統文化で、町おこしや観光の資源でもある。

 ただ、大嘗祭が数十年に一度ということもあり、これまで後継者問題や経費負担の在り方が真剣に議論されることはなかった。後世にどのような形で伝えていけばいいのか。

 西さんは、畑を見守りながら「1世紀余り前、大正天皇の大嘗祭で阿波忌部の麁服調進が奇跡的に復活した。その後、積み重なった知識、技術、教訓を二度と途絶えさせてはならない」と強調するとともに、「麁服調進の継承に立ちはだかる課題の解決にも目を向け、知恵を絞りたい」と決意を新たにした。

  =おわり

 [上]大麻の栽培が三木家の畑で始まった。播種式では三木家当主の三木信夫さんが大麻の種をまいた=美馬市木屋平貢[下]大麻の種まきの後、次代を担う木屋平小中学校の児童生徒が記念行事として獅子舞を披露した=美馬市木屋平貢の八幡神社