生きているということ-で始まる谷川俊太郎さんの詩「生きる」に、こんな一節がある。<生きているということ/いま生きているということ/いま遠くで犬が吠(ほ)えるということ/いま地球が廻(まわ)っているということ>

 リオ五輪で力を尽くす勝者に、敗者に拍手を送りながら、この詩が浮かんだ。地球が回っているからこその五輪である

 重量挙げに出場した南太平洋の島国キリバスのカトアタウ選手が試技後、見せたダンスが話題になった。突き出た腹で軽やかに踊った理由は、気候変動に脅かされるのを知ってもらうためだった

 キリバスは人口11万人の小国。国土が海抜4メートル以下で海面上昇で水没する可能性が指摘されている。2年前、国連の「小島しょ開発途上国会議」で、アノテ・トン大統領は「私は専門家ではないが、気候変動の被害者だ。今われわれの前で起きていることはいずれ他の国でも起きる。議論ではなく、行動すべき時だ」と訴えた

 少年時代、カトアタウ選手の練習場は浜辺だった。寄せては返す波を見ながら、国の行く末を案じていたかもしれない。小さな島国を救えなければ、私たちも救われない、そう教えられた気がする

 ふと地球市民という言葉が浮かんだ。谷川さんの詩はこう結ばれる。<人は愛するということ/あなたの手のぬくみ/いのちということ>。