スポーツの政治利用との見方もある。しかし、このままでは世界は振り向いてもくれない。帰国すれば殺されるか、投獄されるか。リオデジャネイロ五輪、男子マラソンの42・195キロ。心の中で、もう一つの戦いがあったのだろう

 「圧政への抗議だった」。エチオピアの銀メダリスト、フェイサ・リレサ選手は記者会見で説明した。ゴールで見せた、額の前で両手を交差させるポーズである。土地の強制収用計画を巡り、故国では住民と政府の衝突が起きている

 五輪の始まった今月上旬、90人以上が治安部隊に殺害された。×印は住民の抗議のポーズだそうだ。政府がただで済ませるはずはない。リレサ選手は亡命を検討している

 同じ地球で8億人が飢餓に苦しんでいる。12億人は電気のない生活を送っている。スポーツを楽しむ余裕のある国、ある人だけで、世界は成り立っているわけではない

 リオでは、その一端が見えた。紛争や迫害で移住を余儀なくされた6500万人を代表する難民選手団だ。東京までに、結成の必要もない国際情勢にできようか

 トーキョー。「平和」の国での五輪である。眠い目をこすりながらテレビにかじりつくことのできる人を、数億人規模で増やしたい。メダルも大事だけれど、誰もがスポーツを楽しめる平和の祭典、志の高い大会にしなければ。