猿人の女性とはあまり縁がない。それでも、アフリカ東部のエチオピア、化石になって発見された「ルーシー」さんなら、名前ぐらいは知っている。彼女、高さ12メートルを超す木の上から落ちて亡くなったらしい。約320万年前の出来事である

 米テキサス大研究チームの発表によると、足から地面に落ちたようだから、恐らく事故なのだろう。猛獣から逃れてか、木の実などの食料を探しているさなかか。「猿も-」と、彼女には失礼なことわざも頭をかすめた。いやいや、そもそも猿だったら事故は起きていない

 樹上生活から地上での直立二足歩行に移り、木登りの能力が低下した可能性がある、とチームは推測している。その通りだとすれば、進化も、いいことずくめではない

 猿人は、簡単な石器を使っていた。その後、原人、旧人、新人へと人類は進む。火を操った痕跡が見られるようになるのは、原人になってから。気も遠くなる月日を重ねて、ようやくたどり着いた現生人類である

 原子の火まで手に入れたけれど、自らを滅ぼすほどの火種に、核のごみ処理も含めて、手を焼いている。原子力の平和利用をうたう日本でも、東京電力福島第1原発あり、高速増殖炉「もんじゅ」あり

 ルーシーさんの転落から320万年。人類は再び高い木の小枝の上を歩いているのかもしれない。