間違いなく、常ならざる状況である。少なくとも、今年で28年になる平成に入って初めてだという。交通死亡事故の多発を受け、徳島県警が「非常事態」を宣言した

 犠牲者は40人を既に数え、昨年1年間の27人を大きく上回っている。目を引くのがお年寄りの絡んだ事故だ。歩いていて、あるいは自転車に乗っていてはねられ、亡くなるケースも後を絶たないのだが、このところ様相は変わってきている

 県警によると、事故発生時に最も過失の重い第1当事者になる65歳以上の人が、年々増えているらしい。自損事故ばかりではなく、死亡事故を起こしてしまう例も相次いでいる。高齢者=被害者という図式は成り立たなくなった

 前方不注意やハンドル操作の誤りといった初歩的なミスによる事故も少なくないそうだ。高速道路の逆走も問題となっている。ベテランだから大丈夫といった意識が、頭の片隅にでもあれば、すぐに捨てた方がいい

 前美馬市長の例を引くまでもなく、事故は人生を大きく狂わせてしまう。これは年齢にかかわらない。自分や家族だけにとどまらず、相手がいれば、その人の人生までも

 車の安全性能は、かつてに比べて格段に上がった。座れば目的地まで連れて行ってくれる。そんな車が普及するのも夢物語でなくなった。その日までは忘れまい。安全運転を。