単行本の累計発行部数は1億5千万部に及ぶ。主人公の両さんこと両津勘吉がいかに愛されてきたかを、よく物語る数字である

 東京は下町勤務のはちゃめちゃな警官を描いたギャグ漫画、雑誌「週刊少年ジャンプ」の連載「こちら葛飾区亀有公園前派出所」が17日発売の同誌で最終回を迎える。世に出て既に40年がたつ。一度も休むことなく、人気を保ったままの引退となる

 とっぴな行動で周囲を困らせる両さんは、失われ行く下町の心を宿した、葛飾柴又、寅さんのような雰囲気も併せ持つ人物だ。「もっと楽しいことがあるじゃないか」と、ゲームに没頭する子どもたちを諭したりもする。面白おかしいばかりではないところに、支持が集まった

 亀有は、作者で漫画家の秋本治さんの故郷である。最初から下町を作品の柱に据えるつもりだったわけではないそうだ。<「こち亀」が僕に下町を描かせている>(「両さんと歩く下町」集英社新書)。読者の要望に応えているうちに自然とそうなったとか

 東京、下町の奥深さ。過ぎ去りし日のにおいを、読者は鋭敏にかぎ取っていたのかもしれない。東京のみならず地方でも、土地ならではのにおいは消えつつある

 どこを切っても同じ顔。いずれは金太郎あめのような日本になりはしないか、下町を愛する両さんでなくても心配になる。