世界に衝撃を与えた惨事に、心が揺れ、価値観が大きく変わった人は多い。2020年東京五輪・パラリンピックの新しいエンブレムをデザインした野老朝雄(ところあさお)さんもその一人だろう

 江戸時代に広まったチェック柄の「市松模様」と伝統色の藍色で粋な日本らしさを描いたが、そうした紋様に特化してデザインを始めたのは、01年の9・11(米中枢同時テロ)が契機になったという

 「つながりをテーマに、建築を学んだ自分がコンパスと三角定規を使ってできることは何か考えた。つながる紋様はライフワークとしてずっと続けていく」。その紋様は、異なる民族や文化をつないで、世界を形づくっているように見える

 思えば、民族間、宗教間の争いは連綿と続いており、今もなお終わりは見えない。過激派組織「イスラム国」(IS)の台頭で、無差別テロも相次いでいる。平時は片時もない

 平和の祭典といわれるリオ五輪、20カ国・地域(G20)首脳会合が開かれているさなかも、多くの人たちの命が奪われていた。遠い世界の話ではない。その国の人々の命とも、必ずどこかでつながっている

 あの9・11から、きょうで15年。ニューヨークの世界貿易センタービル跡地(グラウンド・ゼロ)で追悼式典が開かれる。亡き人を悼み、悲しみを共有する日だ。私たちの心もそこにある。