小学生のころの夢をかなえる人は少ない。長ずるに従い夢も変わっていったりもするけれど、より大きな理由は、持続する意志が足りないことにあるだろう。ひたむきな思い。国民栄誉賞を受けるレスリングの伊調馨選手には、それがあった

 青森県八戸市出身。1997年、卒業文集に書き残している。<10年後の私。オリンピックに出て、金メダルを獲(と)っている>(「一日一日、強くなる」講談社)。10年とたたない2004年、アテネ五輪で夢はひとまずかなった

 われら普通の人間は、到達するのが夢だと思う。どうやら、そうではないらしい。<もっとうまくなりたい。もっと強くなりたい。諦めたら、そこで終わり。試合終了。まだまだ追求していかないと>

 記録にこだわってはこなかった。負けても成長のきっかけと前向きにとらえる。けれどもオリンピックだけは別である。支えてくれる人への恩返しの場だから、「金メダルでなければ」

 人類最強と呼ばれたロシアのカレリン選手さえ、望んでもなし得なかった五輪4連覇。女子の個人種目では史上初めて。それも通過点だ、と受賞決定の会見では語っていた

 レスリング人生はまだ半分、50点ぐらい。感謝を忘れず、いちずに高みを目指す。<日々進化しているいまが一番幸せです>。その言葉に、当分変わりはあるまい。