災害は、テレビの中だけの出来事ではない。一人の転校生が当たり前の事実を教えてくれた。濁流に家がのまれた、と聞いた。1976年9月、大規模な災害を引き起こした台風17号の被災者である
台風に伴い、県内では多い所で6日間に2700ミリ余りの雨が降り、土砂災害で10人が亡くなった。13日の長崎市上陸に先立つ11日には、那賀町日早の四国電力の観測所で、日降水量1114ミリを記録している
旧木屋平村(現美馬市)では、穴吹川沿いの民家28戸が流失した。それでも一人の犠牲者も出していない。7人が死亡した前年の台風6号の教訓が生き、早めの避難に徹したからだという
17号台風から40年になる。仕事に就いてからは災害現場の取材もした。それでいて、防災の心構えを問われれば、正直なところ、自分や家族だけは大丈夫ではないか、といった甘い認識がどこかにあるようにも思う
災害はそんな、人の隙をつく。「今までなかった」に安住していて、安全は得られない。「これからもない」保証にはならないのである。あそこで起きた災害が身の回りで起きたらどうする、と想像することが大切だ
台風16号が懸念される。取り得る限りの手段で安全を確保したい。あす21日は、戦前の34年、3千人を超す死者・行方不明者が出た室戸台風の上陸した日に当たる。