主人公に恋人がいなければ、文学も歌劇も歌謡曲もフォークソングも多くの名作が消える。恋い焦がれる人のために決闘し命を落とす青年もいなければ、眠れない夜も来ない。バラの花束を抱えることもなかろう

 「風が吹けば桶屋がもうかる」の例えにならえば、「恋人がいないと田畑が荒れる」。つまり、恋人がいない-結婚できない-地域の子どもが減る-学校が統廃合される-若者が住まなくなる-後継者不足で田畑が荒れる

 そんな状況が来つつある。18~34歳の未婚者のうち男性の70%、女性の59%に交際相手がいないことが、国立社会保障・人口問題研究所の調査で分かった。それでも、男性の86%、女性の89%が「いずれは結婚したい」と考えている

 では、どうすればよいのか。見合いや徳島県が支援する出会いのパーティーへの参加など、手段はいろいろある

 <恋人もいないのに 薔薇の花束抱いて いそいそ出かけて行きました>。シモンズの歌では、恋人がいなくても薔薇を抱いているが、これは恋に別れを告げる歌。何もないところに花はいらない

 <いのち短し恋せよ少女>は「ゴンドラの唄」の一節。<恋をして恋を失った方が、一度も恋をしなかったよりもましである>とは19世紀の英国の詩人テニソンの言葉だ。恋のススメに耳を澄ましたい秋の訪れである。