表題にはっとして、素通りのできない本がある。「動物に魂はあるのか」(金森修著、中公新書)もそんな一冊だ

 「我思う、故に我あり」の哲学者デカルトは「動物機械論」を説いた。魂なんぞあるわけがないと、ウサギや犬を生きたまま解剖することもあったらしい。彼の説とどう向き合うか。後の思想家らの仕事の一つとなった

 現代の常識とは随分懸け離れているようで、そうでもない。商品になるとみるや今も、途端に命はモノに変貌する。ゾウやサイ、希少動物の密猟はやまない。南アフリカで始まったワシントン条約締約国会議でも議題となろう

 身近なところでは昨年度、1489匹の犬猫が県内で殺処分された。猫が増えているそうだ。放し飼いで生まれる新しい命にまで、飼い主の優しさは届いていない

 動物に魂はあるか。犬猫にはありそうだ。ならば食肉になる家畜には。昆虫や植物はどうだろう。順を追って考えていくと、では人間は一体、というところまでたどり着く

 魂-。こんな込み入った哲学を長きにわたって議論してきたのだもの、人間は少しだけ特別な存在なのだろう。<お前がそんなに複雑で優れた魂をもっているのは、他人だけではなく、他の生物にもできる限り気遣いをすることができるように、そうなっているんだよ>。あすまで、動物愛護週間。