日本人研究者が今年も「イグ・ノーベル賞」を受賞した。10年連続になる。ノミネートされるのは「人々を笑わせ、考えさせる業績」というから、とかく日本人は苦手とされるユーモアのセンスも、かなり磨かれてきたようだ

 というのは大いなる誤解で、研究者は受けを狙って日々データを取っているわけではない。東山篤規立命館大教授と足立浩平大阪大大学院教授の「股のぞき」の研究も、姿勢の違いによる視覚の変化を、真面目に論じている

 股の間から風景を見れば、距離感が正確につかみにくくなる。両教授はこれを証明したわけだが、こうした感覚は昔から知られている。股のぞきをすれば、この世ならない異界が見えるといった伝承は多い

 「日本の海の幽霊・妖怪」(中公文庫)によると、山口県の瀬戸内海、周防大島の船乗りはかつて、怪しい船に出合ったら、股のぞきをしたそうだ。幽霊船なら、船は海面から離れ、少し高い所を走っているらしい

 東京五輪・パラリンピック開催費用などを検証する都の調査チームが、競技会場となる3施設の建設中止を含めた抜本的見直しを知事に提案した。股の間から眺めてみなくても、3兆円超、相当に高い所を走っていたようである

 五輪、五輪と浮かれている間に、費用は大きく膨らんだ。さては、魔物でも取りついているか。