NHKの連続テレビ小説は、時に見る人を饒舌(じょうぜつ)にする。「とと姉ちゃん」もそんな一作である。きのう、ヒロインと共に雑誌を創刊したカリスマ編集長の花山伊佐次が逝った。モデルは「暮しの手帖」の初代編集長で一風変わった人物、花森安治

 「花森学校」の最後の生徒で、石井町出身の尾形道夫さん(66)は初出勤の朝を覚えている。銀髪、白いジャンパー姿の花森は「女性誌でも婦人誌でもない、本物の経済誌であり、本当の総合誌だ。君たちも、そのつもりで働いてくれ」と語った

 空襲の焼け跡が残っていた1948年、「暮しの手帖」は産声を上げた。企業広告を取らず、思ったことを言う、いわば愚直な雑誌。尾形さんは、その3代目編集長を務めた

 ドラマはきょう最終回を迎えるが、花森を今によみがえらせた意義は何だろう。尾形さんに聞くと、こう返ってきた。「暮らしを大切にと言うけれど、それを実行し、形にしていくのは簡単ではない。しかし、その姿勢をなくしてはならない」

 モノがあふれ、便利になったが、生活は潤っているのか。本当に豊かなのか。戦後昭和の雑誌の役割は今も変わらない

 半田そうめんや小男鹿が好物だったという花森。彼を知る編集者はわずかになったが、残した思いは生き続けていると尾形さん。花森が人を饒舌にするゆえんである。