「ジュース持っていかんね」-。四朗さんは20代。毎朝、出勤前に祖母から声を掛けられる。悪い足を引きずりながら、バイクのそばまで来て手渡してくれたジュースを、会社で飲むのが日課だ

 心の病に苦しむ人たちの救いになった一言を集めた「勇気をくれた言葉たち」(ラグーナ出版)にあった。鹿児島市の版元に連絡してみた。メンタルヘルス関連の本や雑誌を発行しているこの会社、中心になっているのは、心の病を経験した人たちだという

 社長の川畑善博さんは精神保健福祉士。勤務する病院で患者さんと始めた文芸誌「シナプスの笑い」が評判を呼んだのを機に、精神障害者の雇用と自立訓練の場として会社を設立した

 「勇気-」に並ぶのは、古今の名言ではない。多くは日常の何げない言葉だ。「誰が語るかが重要で、信頼、苦難といったより大きな背景があって初めて出てきた一言だから、心を打つのでしょう。人と人は言葉でつながるのです」と川畑さんは言う

 文化庁の国語世論調査で「見れる」「出れる」のいわゆる「ら抜き言葉」を使う人が多数派になった。半数以上が絵文字に親しむ。嘆く人もいようが、言葉は移ろいゆくもの、仕方ない面もある

 それよりも、大切な思いを伝えられているか、大切な思いをきちんと受け止められているか、そちらが気になる。