火山に縁のない四国に灰が降る。古代の人なら、さては悪いことが、と気に病んだかもしれない。現代とて。地震の傷が癒えない熊本、いつまで災害に苦しまなければならないのか。心配は募る
阿蘇山で36年ぶりに爆発的噴火が発生した。噴煙は高さ1万1千メートルにまで達したという。気象庁によると、今後も同規模の噴火が起こる可能性がある。影響の及ぶ地域の人は気が気でないだろう
阿蘇山上の名所に通じる県道も通行止めとなった。地震で被災し、先月中旬、開通したばかりだった。折りしも秋の観光シーズン。噴火は、地震後の落ち込みから戻り始めた客足を再び遠のかせかねない
東大教授を務め、関東大震災につながる地震を予測した今村明恒博士は、戦前に活躍した地震学者。子ども向けに書いた火山と地震の本で阿蘇山に触れている
古来、日本では火山の主が俗界にけがされるのを嫌い、清めの目的で噴火すると考えられてきたそうだ。朝廷は異変があるたび使いを送って祭事を行い、神田を寄進し、位階を進めて神の怒りをなだめた。阿蘇の開祖とされる阿蘇神社の祭神・健磐龍命(たけいわたつのみこと)は正二位を得ている
克服されるべき迷信とし、災害予防の大切さを説いた博士に倣いつつも、自然の巨大なエネルギーを前にして、今はまだ「怒りよ鎮まれ」と祈るほかはない場合がある。