逃げ込んだ下水道で、汚物にまみれ暗闇をさまよう。ようやく見えてきた光、たどり着くと出口には冷たい鉄格子がはめられていた-。アンジェイ・ワイダ監督の「地下水道」は、ナチス占領下、ポーランドのワルシャワ蜂起を描いた映画だ

 絶望する主人公をとらえていたカメラが、何事かを告発するかのようにゆっくりと動き、川向こうの街並みを写す。映像には出てこないが、そこには、立ち上がった市民を援護し、ナチスを駆逐するはずだったソ連軍がいた。ワルシャワは裏切られ、見捨てられたのである

 製作されたのは1956年。第2次大戦が終わって10年ほどしかたっていない。スターリンは死に、指導者はフルシチョフに代わってはいた。ただ、ソ連の威光が東側陣営の隅々まで照らしていたころである

 当局ににらまれれば、作家はペンを折られ、監督はメガホンを奪われた。史実は都合よくねじ曲げられた。ソ連批判を盛り込むには決意がいったろう。その後も自由の旗を掲げた自主管理労組「連帯」を支持するなど権力に抗し続けた

 「真実は隠せない。昔の事を記録にするのがわれわれの義務だ」。反骨の映像作家を送るに際し、残された言葉をかみしめている

 報道に携わる一人として思う。「今の事を記録にするのがわれわれの義務だ。真実が隠されないように」。