中学生になっていただろうか。プロ野球ナイター中継の合間、CMの時間、トランジスタラジオがしわがれ声で歌い出した。<どれだけ遠くまで歩けば->(忌野清志郎訳)。人が人として受け入れられるの? 砲弾が永遠に禁じられるの? 音楽を聴いて初めてぞくぞくした

 随分たって、ようやくライブでその人に会った。曲調はまるで違っていた。米国民謡や近現代詩、10代のころからのめり込んだ旋律や言葉を大切にしつつも、常に変化をやめない。ボブ・ディランさんは、そんな人である

 歌手では初めてのノーベル文学賞受賞は、世界で驚きをもって受け止められている。社会を映す数多くの歌詞で「米国音楽の偉大な伝統の中に新たな詩的表現を創造した」。選考理由にはそうあるけれど

 あいにく、英語の詩の文学性をうんぬんする知識はないが、ディランさんの歌を借りれば、ノーベル賞も、「時代は変わる」ということだろう

 冒頭の曲は「風に吹かれて」。人種差別への抗議、反戦。さまざまなメッセージが込められている。歌が生まれ半世紀がたつ。どれほどのことが変えられ、どれほどのことが変えられなかったか

 人々の叫びが聞こえているだろうか。人々の命が失われ過ぎていることに気づくのはいつ? 風の中にあるという答えを探して、もう少し歩かなければ。