ナチス・ドイツが電撃戦で欧州を席巻し、この分ではイギリスが倒れるのも時間の問題だ、と分析した戦前の日本。「バスに乗り遅れるな」の掛け声もかしましく1940年、日独伊三国同盟を締結した。戦後の分け前にあずかろうとしたのである
米英との関係は悪化し、結局、太平洋戦争に至る。最終目的地はヒロシマ、ナガサキ。バスはまるで見込み違いの方向へ突っ走っていた
被爆から71年になる。今度のバスはどうだろうか。国連委員会で、来年の「核兵器禁止条約」制定交渉開始を定めた決議案が採択された。核兵器を法で禁じ、核廃絶へとつなげる試みである
表示された行き先に文句はないはずだ。ところが、「核の傘」の下にある日本。決議に反対した。「文面に安全保障上の考慮がなかった」からだという。本来先頭になるべき唯一の被爆国がこれか、と失望したのは被爆者だけではない
「反対」とはいえ、バスには乗るらしい。条約交渉に加わり「しっかり主張したい」という。でも何を? 核保有大国は交渉つぶしに躍起になるに違いない。一緒になって足を引っ張りでもしようものなら、国の良心が疑われる
核を持つ国と持たない国の間を取り持つのが、日本の役割だろう。「乗るには乗ったが…」と後世、歴史家から指弾されるようなことだけは御免被りたい。