邂逅ともいうべき、思いがけない出合いがあるものだ。知り合いの記者が雪国の小学校に通っていた頃、複製名画の行商が時々やって来た。ピカソやドガ、ルノワールなどの複製画が数百円で売られ、昼休みになると、子どもたちが集まった

 なぜ、そんな物販が学校に? 情操教育の一環だったのかもしれない。そこで記者は印象に残った黄色のドレスを着て読書する若い娘の絵を買う。生まれて初めて小遣いで買った「アート」だった

 今月、訪ねた米国のワシントン・ナショナル・ギャラリーで記者は、その実物の絵に出合った。フランスの画家フラゴナールの「読書する娘」との四十数年ぶりの邂逅

 「なぜ、小学生だった私がその絵を気に入ったのか」。記者は気付く。それは「娘の横顔が、本を読む幸福に満ちあふれていたからだ」と。本好きだけれど、友達をつくることが苦手だった少女の頃。「子ども時代に感じた読む喜び、幸福な時間の感覚を久しぶりに思いだしました」と語った

 1枚の絵との再会は、大好きな読書とともにあの日、あの頃の自分を連れてきた。これから読書の秋を迎えるたび、雪国の読書する娘の話を思い出すだろう

 「いざ、読書。」。巡ってきた読書週間の今年の標語である。本を開いて出合いの秋に。<灯火親し声かけて子の部屋に入る>細川加賀。