我事において後悔をせず、と記した剣豪宮本武蔵ですら、振り返る日々があったろう。いわんや俗人となれば、後悔は古くからの友人と言っていい。出合うたびに一つずつ賢くなっていく。成長の糧ともなる大事な存在だ

 そんなこととは無縁の人らしい。いや、懲りない人、と言うべきか。高知県選出、弁護士資格も持つ山本有二農相である。「こないだ冗談を言ったら(閣僚を)首になりそうになった」。強行採決をにおわせた自分の失言を話の種に、再び口を滑らせた

 環太平洋連携協定(TPP)の承認案を巡り、与野党の攻防がヤマ場を迎えた折も折、この無神経さにあきれる。担当閣僚自ら審議妨害をしてどうする。それも続けざま

 元来、軽率な人だったとしても、巨大与党の数のおごりが、その地金を引き出したのではないか。何があっても最後は数。そんな考えが底流にあれば、緊張も緩もう

 「断固たる対応を取る」と野党もこぶしを振り上げるけれど、触れれば斬る、といった迫力に欠ける。国政を弛緩(しかん)させているという意味では同罪だ

 鳥の歌声がいつも同じ調子にしか聞こえないのは、永田町周辺のがさつな耳の持ち主だけである。国の大きな分かれ目で、不安を募らせている農家の人たちがいる。TPPを、担当閣僚がどうして冗談の種にできるのか。冗談じゃない。