米国社会が変わったといわれる。そうには違いないが、それは米国だけでもない。トランプ・ショックも英国の欧州連合(EU)離脱などと同じ流れの、変容する世界の象徴的な出来事の一つ、と見ることもできる

 世界が変容しているのだから、日本だけがそれから自由であるはずはない。そう思って周囲を見渡せば、気づく。反知性主義にヘイトスピーチ。同様の気分が、日本でも広がっている

 先進国と呼ばれる国々では産業の高度化が著しい。主力は今や知識集約型産業であり、お金も名誉もここに集まる。誤解を恐れずに言えば、大層勉強ができなければ、のし上がっていく機会にもそうそう恵まれない

 幼いころを振り返ってみてもらいたい。大層勉強ができた子がどれほどいたか。大方の普通の人々、つまり中間層が生きづらくなっているのが、先進国の一般的な状況だ

 トランプ氏の米大統領当選は、経済のグローバル化やIT社会に乗り遅れた人々の不満のガス抜きにはなっただろう。しかし問題の根っこには産業構造の変化がある。過激な言動で解決できないことは明白だ

 それが資本主義社会の特性とはいえ、米国に限らず、お金を生み出す競争には疲れが見える。今をときめく仕事でなくとも明日の不安がなく生きられる。富よりも、幸せの在り方を競う社会を夢想する。