第2次大戦の勃発前夜、ナチス・ドイツと旧ソ連が不可侵条約を交わした。にらみ合っていた国が一転、握手をしたのである。慌てたのは日本

 ノモンハン事件でソ連と軍事衝突し、一敗地にまみれたばかり。対ソ戦略として、ドイツと関係を深めようとした矢先だったからだ。情勢を見誤った平沼騏一郎内閣は総辞職に追い込まれた。「欧州の天地は複雑怪奇」との言葉を残して

 80年を経て、再び複雑怪奇な、理解し難い情勢である。英国が欧州連合(EU)から離脱する手続きが、八方ふさがりとなった

 首相がEUとまとめた離脱案に、中身が気に入らぬと与党の一部が反発したのが運の尽き。進退を懸けて議会の賛同を得ようとした首相の覚悟も実を結ばず、離脱日の延期を重ね、いまに至っている

 議会は議会で、八つの案から最善策を選ぼうとしたのに、どれも過半数に届かず決められない。離脱は最大10月末まで先送りされたが、決着は霧の中だ。どんな名脚本家もお手上げの、筋書きのないドラマのように映る。世界に与える影響を考えると、複雑怪奇なり

 ビートルズの名曲になぞらえるなら「レット・イット・ビー」、神のみぞ知る状況だと言えようか。英国民の心境はきっと、決められない政治に「ドント・レット・ミー・ダウン」(がっかりさせるな)のはずである。