「治天の君」。直系の子孫を天皇の地位に就けて、院政を敷く上皇をそう呼んだ。事実上、天下を治めているからだ。「なお東宮の如し」とは、天皇になっても皇太子のように実権がないさまを言う
天皇の生前退位を巡る専門家へのヒアリングは、百家争鳴の様相だ。その示唆に富んだ意見にうなずいたり、首をかしげたりしている
「譲位は容認すべきだ。上皇や院政の弊害や恣意的な退位があるという心配は、象徴天皇が定着した現代では考えにくい」。一理ある。「役割を果たせないから、それを絶対条件として退位したいという考えは、ちょっとおかしいのではないか」。いかにも難しい問題だ
高齢の場合にも摂政を置けるように皇室典範改正を主張する声もある。と思えば、大正時代に摂政を置いた例を挙げ「天皇の存在が曖昧になった」という懸念も
では法的対応は。「特別法では、どうにでもなる前例をつくる。皇室典範改正が王道だ」「特別法を迅速に整備すべきだ」「与野党が一致するまで法的措置を見送るのが相当」。まちまちだが皇室典範改正を求める意見は強い
残る聴取は1回。政府は陛下一代限りの特別立法を軸に検討しているようだ。だが賛否が二分されているのに「初めに退位ありき」で、早期決着を図るのは王道ではない。ここは熟慮し、よりよき道を。