沿岸部に響くサイレンに、あの日を思い出した人も多かったに違いない。先週末、東京電力福島第1原発にいた。もらった資料の中には津波襲来時の避難経路図もあったが、まさかね、と大して確認もしなかった。まさかの坂は思いも掛けない所にある

 福島県沖を震源とするきのうの地震で、福島第1にも1メートルの津波が到達した。現地で遭遇していても不思議はなかった。東日本大震災は現在も継続中だ

 震災から5年8カ月がたつ。構内では除染作業などが進んでいる。多くの場所で放射線量は下がり、原発建屋やその周辺を除いて、ものものしいマスクや防護服はほぼ必要がなくなった。大型休憩所や給食センターもでき、労働環境も向上している

 けれども根本的な解決には程遠い。汚染水との闘いは続いているし、何より、廃炉作業で最も難しい溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)の取り出しは、入り口にもたどり着いていない

 原子炉格納容器内の高い放射線量に阻まれて、デブリがどこにあり、どういう状態か、いまだに分からないのである。福島第1には、今も人が近づくことすらできない難物が息を潜めている

 計画通りにいっても廃炉まで30~40年。それまでは、地震が起きるたびに「フクシマは大丈夫か」と不安がよぎるのだろう。どうやら、原発とは、そういうものらしい。