自分を哀れむというぜいたくがなければ、人生には耐えられない場合がある、と何かで読んだ。その通りだろう。一世を風靡(ふうび)した芸能人ならなおのこと。だとしても、薬物がどれほどの力になるか

 結末は、再び嫌疑のかかった、この人を見れば分かる。歌手のASKA容疑者である。覚せい剤取締法違反などで、2014年に有罪判決を受け、執行猶予中だった

 徳島文理大の藤田義彦教授が本紙「時評とくしま」で、なるほどといった指摘をしている。同じ芸能でも、伝統文化の世界では覚醒剤事犯はまれだ。たとえ能力に限界を感じても、簡単に薬物には手を出さない。売れる、売れないよりも、道を究めることに重きを置くからだという

 ASKA容疑者には、音を究める求道者のような姿勢が欠けていたのかもしれない。もっとも、そんな精神力があれば、はなから薬物に染まりはしなかっただろう

 藤田教授によると、覚醒剤の依存性は、肉体より精神に強く表れる。自ら乗り越える強い意志がないと、断ち切れない。難しさは比叡山の荒行「千日回峰行にも匹敵する」。だから怖い

 容疑が事実なら「立ち直る」との誓いは、うそだったことになる。一度は輝いたASKA容疑者が今見せるのは「SAY YES」とのファンの願いを裏切った、弱い人間のみじめな姿でしかない。