人口減少が進み、災害が相次ぐ世の中だからこそ、年に1度の習わしを心待ちにしている人は多い。神楽もその一つだろう。地域で生きる人と地域外の人を結ぶ。神楽には力がある
出張した宮崎市内海(うちうみ)の野島神社で、そう気付かされた。大漁旗を衣装に使うなど独特で勇壮な舞で知られる野島神楽は460年余に及ぶ歴史があるそうだ。境内には「この日を待っていた」という見物客が詰め掛けた
野島神楽の日を地元では、小豆を煮る、その匂いで知るという。甘さは控えめでもっちりとした食感がある。「野島ようかん」は神楽に欠かせない。神楽なしでは夜の明けぬ、古里の味だ
神楽も、味も、継承していくには人の手が要る。私たちの代で途絶えさせてはならないと、神社では市の中心部で出前教室を開き、舞い手の養成を進めている。今年は、その受講生と地元保存会など約20人が舞った
<むつかしき拍子も見えず里神楽>曾良。そんな里神楽だが、2人一組の「人剣」は圧巻で、背中に乗せたり、帯を持って相手を回転させたりする。曲技だ。合わせた2人の息は弾み、拍手を呼ぶ
訪問客も楽しませてくれた「神楽月」は去ったが、本県のつるぎ町は、神楽で新年を迎える。「天の岩戸神楽」である。守る人、継ぐ人と、息災を祈る初詣客をも結ぶ。地域あっての神楽である。