太平洋を挟んで日米が戦火を交えた事実すら知らない若者がいる、と話題になったのは、もう随分前か。戦争など遠い昔の話で、「和解」の二文字もピンとは来ない、という人もおられよう

 しかし、日米関係に刺さったとげは確かにある。そう思うようになったのは5月の第1幕、オバマ米大統領が被爆地・広島市を訪問した時だ。心のわだかまりが静かに溶けていくような気がしたのは、筆者一人ではないだろう

 安倍晋三首相が今月末、歴代首相としては初めて日米開戦の地、ハワイ・真珠湾のアリゾナ記念館を訪れ、献花する。さまざまな思惑もあるようだが、ここは素直に”和解劇“第2幕の上演を歓迎したい

 記念館は、旧日本軍の攻撃を受けて沈没した戦艦アリゾナの上に設置されている。75年前、1177人が戦死した。船体からは今も油が染みだし、海面に浮かび上がってくるという。決して忘れるな、と訴えかけるように

 振り返れば、降伏文書への署名といった恭順の儀式はあったが、和解の儀式といえるものはなかった。かつての敵国の人々の胸に刺さったとげを抜き「真の和解」につながる第2幕になれば、と願う

 広島でのオバマ大統領の格調高い演説は、聞く人の心を打った。これを超える、歴史的な訪問にふさわしいメッセージを、世界に発信してもらいたい。