韓国の古都、扶余の白馬江のほとり。7世紀、日本と関係が深かった百済が滅んだ際、官女3千人が身を投げたとされる断崖がある。花が散りゆくようだったといわれ、後世、「落花岩」と名付けられた

 さほど広くないその場所に立ったことがある。ここで言う花は何か。あれこれ考え浮かんだのがムクゲ、韓国の国花である。朝に咲き、夕べにはしぼむ。「槿花一日の栄」は、人の世の栄華のはかないことを言う

 ムクゲの一字を名前に持つ朴槿恵大統領。きのう弾劾訴追案が可決された。朴氏は職務停止となり、首相が権限を代行する。花も、さすがに夕暮れが近づいたようである

 180日以内に憲法裁判所が罷免か否かを判断する。職務が停止されても、大統領としての身分は維持される。2004年に訴追案が可決されたものの、憲法裁で罷免を免れた故盧武鉉氏の先例をたどれば、大統領府に住み続け、給与や手当もほぼ従来通り受け取れるらしい

 「私の不徳」と再び謝罪を口にしたけれど、「即時退陣」を求める世論は納得しそうにはない。憲法裁の結果を待つのは得策か

 散り際の美学や潔さは、日本人だけの心情でもあるまい。生き残りへ、あれこれ知恵を巡らすのもどうか、と隣人として思う。19世紀英国の政治家ディズレーリは言った。「誠実にまされる知恵なし」と。