前に飼っていた犬は、とても頑固だった。もし拾われなかったら、どうなっていたか、と言い聞かせてもどこ吹く風
お座りを命じて、一度で座ったためしがない。しつこく迫ってやっと、やれやれ、と面倒くさそうに、ほんの気持ち程度、尻を下げるばかり。もっともこれは、犬の性根に難点があったというより、しつけの失敗、飼い主が至らなかったと今にして思う
15歳を過ぎると、急に後ろ足が弱り、最後は寝たきりになった。人間と同様なのか、と驚いたのだが、油断していると床ずれができる。わが道を生きた中型犬は人の介護を受けながら最期を迎えた
東京農工大などの調査では、この25年で犬の平均寿命は1・5倍の13・2歳、猫は2・3倍の11・9歳に延びたという。餌や医療環境の充実でペットの高齢化が進み、それとともに人と同様の問題が起きている
日本獣医生命科学大の入交(いりまじり)真巳講師の研究では、人間の50歳ほどに当たる8歳以上の飼い犬の約20%に、認知症が疑われる行動がみられる。予備軍は50%を超すというから、相当な確率である。運動やゲームで脳に刺激を与えたり、餌を改善したり、といった対策も大切だとか
最近は老犬ホームもあるようだ。できるなら、自宅でみとってやりたい。それには、それなりの覚悟と工夫のいるペット高齢化時代である。