雪が積もった。県西部では雪景色が広がり、徳島市でも初雪を観測した。平年より5日早いという。雪は美しく、清らかというものに例えられるが、冷たく、人を凍えさせるものでもある

 安倍晋三首相と、ロシアのプーチン大統領を見送るように、首相の地元・山口県長門市も、雪に包まれた。ロシアに「漁師は遠くから漁師の姿を目ざとく見つける」ということわざがある。2人は、遠くからでもお互いの腹積もりを見抜くことができる、そんな親しい間柄になれたのだろうか

 老舗の温泉旅館での一宿。首脳会談は約5時間に及んだ。ふぐ刺しや長州地鶏などに日本酒、岐阜県産ウオッカ、国産ワインを囲んでの一飯。腹を満たし、腹を据え、腹の探り合いを続けたのかもしれない

 山口県の地酒「東洋美人」が気に入ったという大統領は、土産話を持ち帰ったが、首相はさて、何を得ることができたのか。日ロは、北方四島での共同経済活動の実現に向けた協議を始めることで合意したが、肝心の北方領土の帰属問題は進展なしだったようだ

 急がば回れ、ロシアなら「ゆっくり行けば、遠くまで行ける」というらしい。確かに平和条約の締結へ一歩を踏み出すのは重要だが、元島民は高齢化している

 日ロを覆う雪を解かしていくのは、大統領の務めだ。島を返還する道を開く時である。