かけた情けは水に流し、受けた恩は石に刻め。石碑を見るたび、人に教わった、こんな言葉が浮かぶ。恩は生涯、忘れてはならないのだという

 まだ見ぬ子や孫へ、今を生きる私たちに向けて先人は石に言葉を刻んだ。例えば安政南海地震の13年後、1867年に建立された海陽町浅川の天神社石碑は「大地震のあとは油断すべからず」との教訓を伝えている

 地震津波碑は県内で38基確認されており、亡くなった人の数を記したものもある。板野町の県立埋蔵文化財総合センターで開かれている、碑の企画展を一回りすれば「津波による犠牲者を二度と出さないように」という願いが伝わってくる

 嘉永7年、船や網、納屋は流失したが、人々は寺や山に逃れて無事であった。大地震があった時には必ず津波が来る…。碑の解説文を小声でたどっていると、横にいた人もうなずきながら、小声で読み進めていた。備えよ-。先人の息遣いを感じるように

 東日本大震災から5年余、地震は繰り返されている。今年も熊本地震、鳥取地震が起きた。先月には福島、宮城に津波警報、青森、岩手、茨城、千葉に津波注意報が出された

 昭和南海地震から、きょうで70年を迎えた。まだ見ぬ人に向けて教訓を石に刻むような思いはしたくない。しかし、過去からの伝言、先人の恩を無にしてはなるまい。