その昔、荘子はチョウになって遊ぶ夢を見た。目覚めてつくづく考えた。果たして夢でチョウになったのは自分か、はたまたチョウが今、自分になった夢を見ているのか。「胡蝶(こちょう)の夢」の故事である

 夢か、うつつか判然としない、幻想の世界に迷い込んだ心地になった。徳島市で開催中の徳島LEDアートフェスティバル2016。夜がこれほど魅力的とは驚いた。光の妖しさに感嘆もした

 徳島中央公園の木々が、城山の森と響き合うように、虹色に浮かび上がる。新町川に並んだ幾つもの球体が、赤や青に淡く光って流れをつくる。はるかに見上げる藍場浜公園の「リバーサイドクリスタルツリー」。手元のスマートフォンで飾り付けもできる

 3年に1度、今回3回目。内外の芸術家らが30余りの作品を出品している。透明の箱に収められた小品も楽しい。足を止め、しばらく眺めて、ああそうか、と納得したり、感心したり

 LEDの明かりは白熱灯などと比べ、鋭敏で自己主張が強く、現代アートと相性がいいように思う。昼とはすっかり装いを変えた街は、さながら野天の近代美術館だ

 スイッチを切れば失われる光の芸術。はかなさを感じるか、再び来るだろう暗闇に新たな可能性を見いだすか。少々寒いが、今この時だけの街の表情、記憶に刻んでおいて損はない。25日まで。