日米両首脳による米ハワイ・真珠湾のアリゾナ記念館訪問は、両国の歴史的な和解の儀式となった。互いに大きな犠牲を払ったあの戦争を乗り越え、共に発展してきた「和解の力」の意義を、改めて世界に示せたのではないか

 ささいなことが気になった。安倍晋三首相は演説の中で「勇者は、勇者を敬う」と述べた。アンブローズ・ビアスの詩から引用したそうだ。辛辣(しんらつ)な筆で知られる作家である

 例えば著書「悪魔の辞典」の「同盟」の項にはこうある。<国際政治における二人の盗賊の団結。両者は互いに相手のポケットに自らの手を深くつっこんでいるので、単独では第三者から盗みを働けなくなっている>(角川書店版)

 ささいなことからほころびが生じることがある。「シンゾー」は和解の演説に皮肉を埋め込んだ、と深読みされはしないか。杞憂(きゆう)とは思うが、世界へ向けてのメッセージでもある。首相には首相の考えがあるのだろう

 煮え湯を飲まされたことも一度や二度ではなかったが、平和国家の戦後71年は日米関係を抜きには語れない。和解のもたらす益の大きさを考えた時、次はアジアへと目が向く

 憎悪の連鎖を世界は断ち切れないでいる。「寛容の心、和解の力を世界は今こそ必要としている」と首相。アジアの戦後にも区切りを付けてもらいたい。お互いのために。