見たい見たいと思いながら、県内で上映されていないこともあって、いまだに見ていない。1998年、29歳で病に倒れた天才棋士村山聖さんを描いた映画「聖の青春」である

 将棋に詳しいわけではない。思い返してみれば勝ったためしもほぼないが、「遥かなる甲子園」や「どんぐりの家」といった、障害者をテーマにした作品で知られる漫画家山本おさむさんの「聖 天才・羽生が恐れた男」(小学館)を読んで以来、その壮絶な生涯が脳裏を離れない

 小さいころ、重い腎臓病を発症し、亡くなるまで入退院を繰り返したという。将棋はベッドの上で覚えた。「名人」になる、と公言して、81マスの盤上に人生の居を定めたのは小学生の時。13歳で郷里広島を後に、大阪へ出て一直線に進んだ

 座っていることすら耐え難い体調で臨んだ羽生善治3冠らとの激闘は語り草だ。定評のあった終盤の強さは、幼くして逝った同じ病院の友人たちのためにも、生きることを決して諦めなかった、村山さんの生きざまそのものだった

 こんなふうな文も残しているそうだ。「何のために生きる? 今の俺は昨日の俺に勝てるか? 人間は悲しみ、苦しむために生まれたのだろうか? だが、僕は死んでももう一度、人間に生まれたい」

 短くとも濃密な人生が問い掛けてくる。何のために生きる?