残念で納得できない結論である。

 東京電力福島第1原発事故を理由に、韓国が福島、宮城など8県の水産物輸入を禁止している問題で、世界貿易機関(WTO)の上級委員会が禁輸措置を容認する最終判断を下した。

 一審に当たる紛争処理小委員会(パネル)は、輸入禁止撤廃を求めた日本の訴えを認めており、逆転敗訴となった。復興へ努力する被災者や、輸出再開を願う生産者の落胆は大きい。

 WTOの紛争解決には差し戻し制度がなく、このままでは、日本産食品の安全性が疑われる事態になりかねない。誤った風評が海外に広がらないよう、政府は丁寧な説明を続け、不安の払拭に努める必要がある。

 上級委は、日本の食品の安全性には触れず、「必要以上に貿易制限的」とは言えないことなどを理由に、韓国の措置を容認した。

 一方、昨年公表されたパネルの報告書は、日本が食品を厳しくチェックしているとし、安全性を認めていた。その判断を修正せず、禁輸を是認した上級委の結論には首をかしげざるを得ない。

 韓国政府にとっても予想外だったようだが、逆転敗訴には、日本政府の対応のまずさを指摘する声もある。

 外務省は直前まで「当然勝訴」と自信を示していたという。楽観視するあまり、韓国への反論などがおろそかになったのではないか。十分な検証が求められる。

 政府は農林水産物・食品の輸出額を今年、1兆円にする目標を掲げている。WTOでの勝訴をてこに、他の規制導入国への解除要請にも弾みをつける狙いだっただけに、裏目に出た形だ。

 2011年の原発事故以降、日本産食品の禁輸や検査強化など規制に踏み切った国・地域は一時54に上り、今も23の国・地域が続けている。このうち、韓国をはじめ中国、米国、フィリピンなど8カ国・地域が一部の都県を対象に輸入を禁止している。

 台湾では昨年、禁輸の是非を問う住民投票が行われ、継続賛成が多数を占めた。事故から8年を経てもなお、放射性物質の影響に対する懸念が根強いことを表していると言えよう。

 誤解が解けないのは、正しい情報が伝わっていないのも一因だろう。

 日本は、食品中の放射性物質に関する基準を世界で最も厳しいレベルに設定しており、基準値を超えた食品は市場に流通しない仕組みを構築している。

 被災地の福島県では、県産米の全量全袋検査が行われ、水産物は、県漁業協同組合連合会が国より厳格な独自基準で検査している。

 こうした科学的、客観的な情報を、2国間協議や国際会議の場で発信するのはもちろん、訪日客向けの催しなど、あらゆる機会を通じて周知していくことが大切である。