山里を彩る山桜。日本古来のサクラで、県内では場所によって4月下旬まで楽しめる=神山町上分
 

 国道193号を通り、吉野川市美郷から那賀町に向かって車を走らせる途中、神山町上分で大きく枝を張る1本の山桜に出合った。北谷川に沿う集落の一角、茶畑を背景にその山桜は咲いていた。車を止め、しばしその姿を眺めた。

 毎年、楽しみにしているのが山の高い場所で咲く山桜である。低山帯ではソメイヨシノと同時に咲くこともあるが、標高500メートルを超える山中では4月中旬から下旬にかけて咲く。

 ソメイヨシノのような派手さはない。それでも、若芽が出始め黄緑に染まる山肌や、スギやヒノキの人工林の中で赤みを帯びた葉とともに咲く姿は美しく、何度見ても飽きない。

 園芸品種のソメイヨシノが花見の主流になる江戸時代後期まで、花見と言えば山桜をめでることだった。今でも奈良県の「吉野の桜」は有名で、多くの人が訪れているのはその名残だろう。

 山桜は日本固有の1品種ではあるものの、交雑が進み、山で咲く桜の総称として使われることが多い。交雑の影響からか生えた場所ごとに花の時期がずれている。

 樹齢は100年を優に超える木もあり、時期が来ると競うかのように咲く。今年はどんな山桜に出合えるか。そう思いながら山に向かう。