入賞狙いの色気も多分に感じられるが、実態から懸け離れたものでもないのだろう。全国老人福祉施設協議会が募集した「60歳からの主張」川柳部門は、退職後、妻主導になった暮らしを、自嘲気味に表現した作品が多い
典型例をいくつか挙げてみる。<定年後3日で妻の部下になる>。妻の側からは<ついて来い言ったあんたがついて来る>。入賞作はひとひねり効いている。<オレオレとかける亭主を無言切り>。特殊詐欺と絡ませたのがにくい
<目がかすみ妻と書いたら毒に見え>。面白いけど、間違っても口にする勇気はないなあ。作者の夫婦仲は、よほどよろしいに違いない。でなければなどと想像し、くすっとさせられた
<とぼけたらついにボケたと案じられ><何曜日?馬鹿にするなと指を折り>。老いが避けられないなら、笑い飛ばしてやろうという余裕がある。10、20年後の未来の高齢者にも、この明るさがあればいいけれど
日本老年学会などが、現在65歳以上とされている高齢者の定義を75歳以上に見直すよう提言した。昔に比べ若々しいことに異論はないが、年金の支給開始年齢に波及する懸念もあり、身構えつつ聞いた
生涯現役という人も、のんびりといきたい人もいる。「老後の自由」をどう保障していくか。ともかくも<長生きは三文の得と言える世に>。